今や夫婦十組に一組は不妊症で悩んでいると言われ、しかもそれが増える傾向にある。半年から一年で妊娠する人もいるが、長期間にわたりなかなか子宝に恵まれないケースも多い。 中国漢方ではとにかく体を妊娠しやすいように整えていくことに重点をおいている。それには女性のための漢方薬として当帰という生薬が欠かせない存在になる。
この当帰を70%も含む婦宝当帰膠(フホウトウキコウ)という漢方製剤が中国から日本に輸入されている。当帰は不妊症改善の重要な漢方薬であり、体力向上や貧血改善はもちろん特に女性ホルモンの働きを良くし、
骨盤付近の血流改善力が優れているといわれている。 まわりから『子どもはまだ?』と何げなく聞かれるその一言で、子宝に恵まれない女性の心が傷つけられてしまうことがよくある。そしてあれこれと試しているうちに、
また月のものがやってきて、がっかりさせられてしまうこともしばしばある。気をつけたいのは、子どもが生まれないと悩んだりその治療に過度の期待をかけすぎること
がかえって大きなストレスになってしまうことだ。 一般的に、排卵時の妊娠率は約25%とされてそれほど高くはない。
また特に体に異常が認められない場合でも、漢方的な考え方から言うと、何か体に問題をかかえている可能性が多い。したがって、前回に紹介した婦宝当帰膠のような漢方薬を用いる場合でも気持ち
のゆとりに加えてじっくりと取り組む心構えが大切だ。 前回はストレスを作らないことが不妊治療にとって大切であることについて触れた。しかし、そうは言ってもこのストレス社会の中でストレスを作らないこと自体が大変難しい。
それよりは、ストレスとどう付き合っていくか前向きにその方法を考えてみるべきだろう。 不妊治療に限らず中国漢方では、精神不安による月経不順や月経困難、
また更年期障害などに使用する逍遥散(しょうようさん)と言う漢方薬がストレスを和らげるためによく使われる。"逍遥"とは『気ままに悠々と散歩する』と言う意味があり、
今で言う、『悠悠自適・リラックス』に相当する。漢方薬における不妊治療では、体がストレスの影響を受け易い排卵日2~3日前から2週間ほどにわたりこの漢方薬を使うことが一般的で、
必要に応じて毎日服用することもある。精神的不安がもとで不妊に悩む多くの女性は、ストレスを上手に取り払い、
体調を整えるのにむしろこのような漢方薬を積極的に使ってみたらどうだろうか。 中国の伝統医学(中国漢方)には、女性のからだは7年周期で変化するという独特の考え方がある。14才(7×2)までに初潮を迎え、28才(7×4)で成熟し、35才(7×5)から性機能や生殖機能が低下していくと見る。
からだの生理機能から言えば35歳までの妊娠が理想的だが、現実には女性の社会進出・キャリア化で、そう思うとおりにはならない。しかし安心していただきたい。
この医学では、体質改善によりからだの年齢を[若返らせる]事で妊娠が十分期待できるという優れた方法である。 中国漢方では古来より、不老長寿(より健康で、より長生きする)を追求してきた長い歴史を持ち[若返り]については定評のある処方が数多く受け継がれている。なかでも動物生薬としては鹿茸(ろくじょう)、
海馬(かいま)、紫河車(しかしゃ)など、植物性生薬では杜仲(とちゅう)、インヨウカク(いかり草)などがよく使われる。これらを原料とする中国漢方が日本にも輸入されているが、特に効果の高いものとしては
、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、海馬補腎丸(かいまほじんがん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などがある。 手足が冷えやすいとかなにかと寒がるのに、冷えの問題には意外に無関心な女性が多い。 しかし、中国ではとくに若い女性が冷えには気をつけている。妊娠できるような健康な体づくりを日頃から心がけているからだ。冷えの原因には、冷房、冷たい飲食物、薄着のほかにホルモンのアンバランス、 自律神経失調やストレスに関係するものが多い。とくに下半身の冷えで気をつけなければならないのは、子宮、卵巣、輸卵管など、妊娠に直接関わる重要な器官がおさまった骨盤への影響である。 骨盤の血液の流れや働きを著しく悪くしてしまうからだ。
子宝を望むなら次のような心がけが大切だ。まずとくに下半身を冷やさないこと。冷たい飲食物は夏でもほどほどに、
日頃から下半身の薄着は避けてほしい。更に骨盤を中心に血液の流れや働きを良くする漢方薬が大いに役立つ。 皆さんはオ血(おけつ)の女性は妊娠しにくいという言い伝えがあることをご存知だろうか。それは下腹部や太腿の付け根あたりが硬く感じられる場合のことで、その原因は〔中国漢方〕では血液の流れが
悪くなっていることを示す。その悪い血液の流れに起因するその他の症状として、月経が遅れる、生理痛がつらい、月経血に血塊が多い、色がどす黒く粘りがある、月経中に頭痛や肩こりが起こる、など月経に
まつわる不調が多く見られる。 この方法は不妊の原因となる子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫や癒着などが起きるのを防ぎ、さらに骨盤の血流を改善し、新鮮な血液が十分に卵巣や子宮に行き渡るようにもする。
これだけでも卵巣発育がよくなり、排卵や着床が促進されすべてが妊娠に有利な要因となる。この活血化オ薬として代表的な生薬は紅花、香附子、センキュウ、セキシャク、丹参などがあり、
漢方薬としては中国から輸入されている冠元顆粒(かんげんかりゅう)を始め血府逐お丸(けっぷちくおがん)というものがある。 厳密に言うと生理不順とは月経周期が一定しないことを指す。実はこれが不妊と深く関わっているのだ。月経周期は個人差があるものの、医学的には通常25~38日間とされているが、 漢方ではむしろ周期の変化を重視する。周期が25~26日間だった人が32~33日間になった場合、周期が正常な範囲内でも、漢方ではこの7~8日間の変化を体に何らかの異変が起きている前兆ととらえ、 本格的な病気になる前に先手を打って防ごうとする。
実際基礎体温では低温期と高温期がはっきりと分かれていない、低温期が長い(15日間以上)、高温期が短い(13日以下)などと不妊に関係する現象が現れる。つまり生理不順の背景には、
無排卵性月経、卵子の質が悪い、排卵がうまくいかない、黄体ホルモン(高温期維持に必要)の働きが悪いなどの危険性が潜んでいるかもしれないのだ。これらの状態を漢方では気血両虚や腎虚という虚証
(働きが低下している)に属すると考える。 今まで原因不明とされてきた不妊には、子宮内膜症によるものが多い。子宮内膜症は急増しつつある注目すべき疾患で、激しい生理痛・腰痛・排便痛・性交痛・月経以外の下腹痛などのつらい症状以外に、
不妊の大きな原因を占める。妊娠可能な女性の約10%が罹っている。 治療はまず排卵をしやすくする為、一般的に排卵予定日の2~3日前から10日間ほど、異常内膜増殖や出血・癒着を抑える働きを持つ、活血化お・消腫散結の漢方薬である冠元顆粒や血府逐お丸などを集中的に
使用することが多い。異常内膜組織を漢方ではお血ちょう積として捉える為だ。 最近の男子大学生の精子が半減したとかオスのカエルが雌化したとか、そういうニュースを聞くたびにギョッとさせられる。確かに20年前に比べると男性の精子の数が2/3になったという調査報告もあるほどだ。
逆に、検査では精子の数や運動率が正常値をキープしていても、日頃から疲れやすいとか、性欲がないとかの症状が続くと、やがてそれは男性側の不妊予備軍となる恐れがある。その日の体調に大きく左右
される精液検査の結果で判断するよりは、ひたすら体を丈夫にして生殖機能を高めるようにしたほうが得策だ。
補中益気丸という漢方薬は精子の数を増やし運動率を良くすると以前マスコミで大々的に報じられたことがあるが、これは第一段階に使うもの。中国漢方では本格的に治療行う場合、
補腎薬と呼ばれる強壮強精作用をもつ海馬補腎丸・至宝三鞭丸という漢方薬を使う。これらは、中国漢方の男性ホルモンと言われる同類相補に基づく動物の生殖器(鹿鞭ろくべん)が成分として多く配合されている。
セカンド不妊という言葉があるように、二番目の子供がほしいと思ったときに妊娠できずに悩んだ経験を持つ方も多いはず。その理由の一つに、長い間、夫婦生活をしていると、
女性の子頚管粘液に抗精子抗体(精子を敵として誤認して攻撃する抗体)ができてしまい、その結果精子が子宮内に入れないということがおきてしまうことがあります。この場合の不妊治療方法として、
ステロイド剤、免疫抑制剤やアスピリンを使用しますが副作用などが心配です。 例えば、腎を補う漢方薬(補腎薬)は、月経周期の中で低温期に杞菊地黄丸、高温期に海馬補腎丸とよばれるものを使い分け、血行を良くする漢方薬(活血薬)では、田七人参や冠元顆粒などを使います。
また、その他の第二子不妊の理由として、第一子の妊娠、出産、産後そのものに原因がある場合があります。母体は妊娠中胎児を養い、出産では体力を消耗します。そして出血、産後の悪露排出、
子宮復旧、哺乳、育児は母体に負担となることが多いのです。そのために産後ではホルモンの働きが乱れたり低下したりし、血行が悪く(骨盤の血流)なるのです。つまり、
第一子の出産による体の消耗が第二子の妊娠をさせにくい体にしてしまうため、産後の養生としてまず母体が妊娠しやすいように体の状態を整える必要があるのです。 筆者が日本に来てまず驚いたのは、日本の妊婦は産後一週間もたたないうちに家事や仕事に復帰し体を酷使するにもかかわらず、そのわりには体をいたわる漢方薬や栄養剤などを摂るようなことをしないことだ。
中国では、産後は女性が一生のうちで一番大事にしてもらえる時期で、家事はいっさいやらないのが当たり前、その上、栄養たっぷりの薬膳を嫌と言うほど食べさせられ、最低でも1ヶ月間、普通は3ヶ月間は当帰
という生薬の入った漢方薬を服用する。産後の女性は外出も控えてただひたすら養生して、体力を回復させようとするのだ。 出産を終えた女性の皆さんは、まず体力をつけることに専念し、なるべく体を冷やさないような工夫を心がけ、悪露排出や子宮の戻りを促し、良質の母乳を作れるように気血を補い、
血行を良くするように努めてほしい。そのためには十分な休養、体を冷やさず、気血を補う食べ物(ナツメ・烏骨鶏・黒米・黒豆など)を積極的に摂取し、さらに女性の生薬と呼ばれる当帰が
タップリと含まれている婦宝当帰膠をぜひ活用してほしい。 不妊で相談にこられる夫婦の中に性生活の回数が少ないカップルが多い。女性の排卵日に合わせた投機的に一回だけとか、また人工授精や体外受精を受けている夫婦では、普段の性生活を省いてしまうケースもある。
その原因を問うと、特に男性に多いのは精力減退だ。それは中国漢方の立場からみて三つのタイプがある。 (2)ストレスタイプ(気滞) 流産は、待望の懐妊の嬉しさも束の間となり心も体も深く傷つける。中国漢方では大切な受精卵を守ってくれるのは体のエネルギーの源である『気』の仕事だと考える。
即ち、切迫流産になっなことがある方や妊娠後下腹部が重くて痛む、もしくは帯下に血が混じるなど流産になりそうな兆候のある方は、気の働きが低下し、きちんと受精卵や胎児が子宮で保たれないからだ。 せっかくの授かりものを流産から守るには、妊娠後だけでなく、日頃から気血の働きを高めるように努めるべきだ。
この目的のために作られた漢方薬は「安胎」・「保胎」の薬という中国漢方の不妊治療を得意とするだけに、この類の漢方薬はとても多く、尚優れた効果がある。 いろいろな治療を受け、やっと妊娠して子どもが生まれたのに、体が弱くてちゃんと食べられない。夜泣きや泣き出すとなかなか泣き止まない。
皮膚が弱く、すぐあせもや湿疹が出来るなど、生まれてからも親を悩ませることはよくある。 元気な子を生むためには 生理痛を持つ日本の女性はとても多い。生理時は痛むものと勘違いし、何もせず我慢をしたり、安易に鎮痛剤を服用したりする。月経は生理と呼ばれるように本来は痛みはなく、
せいぜいお腹や腰が重く感じるくらいで痛みは異常なのだ。 1.お血タイプ・・痛みは強く、きりきり刺すように痛む。出血が多く痛みが強くなる。血塊が多く月経血は黒ずみ月経が遅れがち。 周期療法をご存知でしょうか?。約三十年前からこの治療方法は、中国漢方で最も有効かつ良く使われている不妊治療の方法です。 具体的には個人に合わせた方法が必要だが、一般的に、 西洋医学の不妊治療の最前線となる体外受精を受けている方は増えつつある。高額の費用がかかる上に、女性の体に負担をかける事も多い。排卵誘発剤を始めとする多くのホルモン剤も言うまでもない。
中国漢方では、そもそも一ヶ月一個の卵しか作らない卵巣に一度に複数の卵子を作らせるのはかなりの消耗になると考えられる。 その時は参茸補血丸という動物生薬の入った漢方薬がもっとも有効だが、他に杞菊地黄丸に紫河車を加えても良い。できれば低温期だけでも使ってほしい。この方法により体外受精でなかなか成功しない
カップルに朗報をもたらす事は私自身が多く経験している。
これは人工授精にも当てはまる。頻繁の通院や痛みを伴う採卵や高度な技術への期待が高い故に成功しない時の強い失望・喪失感などは心に負担をかける事が多い。
あせりや苛立ちを抱え込まないように心の余裕を持つことが大切だ。
このような時に不安感やイライラを和らげてくれるシベリヤ人参茶など薬草茶を日頃のお茶代わりにおすすめしたい。
二千年前に書かれた中国の医学書《内経(だいけい)》に、女性は7年、男子は8年周期で体が変化し、女性は35歳、男性は40歳を境に体が衰えていくと現代医学とほぼ同じ認識が記載されている。
女性は35歳を過ぎると当然体が衰え始めるが、漢方医学では妊娠しにくいことは年齢と関係なく体の衰えの一種として捉える。 この蓄えが不足すればホルモンの分泌が低下し乱れやすくなり卵巣や子宮への栄養が滞り衰えが早まるのだ。若くして肝心不足になるのは夜更かしや目の酷使など現代人のライフスタイルにある。
養生法としては規則正しい生活を行い、目に良く、肝腎を補充する枸杞子・白菊花などの食品をお勧めしたい。それらを食べたり飲んだりしても良いが、それ以上に効果を期待するならこれらを主成分とする
有名な漢方薬・杞菊地黄丸がある。食事には軟骨やすじやなまこのようなねばねばしたものや黒豆・黒ゴマ・黒木耳のような黒色食品、更にレバー・肉の赤身・プルーン・なつめなどのような赤紫色食品を
積極的に取り入れることをお勧めしたい。
基礎体温は二層性で安定している人は多いと思います。漢方医学では、西洋医学より基礎体温表からいろいろな情報を読むことができます。 (2)低温期と高温期のある二層性だが、月経が来ても体温がすぐ下がらなく、全体として月経期の体温が高めのケースの場合。
漢方医学ではお阻胞宮といい、月経が来ても子宮をきれいに掃除できない状態。
新たな子宮内膜を充分につくれないのが問題。いわば、硬くて汚い布団を捨てずに、柔らかくてふわふわした新しい布団を持てないようなもの。治療として、月経期にお血を取り除く冠元顆粒と婦宝当帰膠を対として、五~七日間に使うのがよい。
養生法として、月経中にローズや紅茶をお茶代わりにのむのもOK。一見、問題のなさそうな二層性基礎体温でも、かっくれ不妊の温床になっている可能性もあり、要注意!であることはいうまでもない。
一般的に男性不妊は、精力減退によるものが大半を占めていると考えられているが、実はお血(循環障害)によるものもかなりある。
この男性不妊におけるお血には二つ有り、まず、ひとつめは精索静脈瘤があげられる。これは陰嚢静脈から精管静脈にかけての静脈がクネクネボコボコと変形した状態で、
勃起時の陰嚢部にみみず腫のように見られる。自覚症状はあまりないので気づかないことも多い。酷くなると手術になるが、手術を受けたくない方や軽度の場合は漢方薬もひとつの選択肢になろう。
漢方療法ではお血を取り除き血行を良くする為『冠元顆粒』『血府逐お丸』は特にお勧めだ。養生法としては、お尻がすっぽり入る容器に温かいお湯を張り、睾丸や陰茎も浸かる様にお尻を入れて
10分~15分程座浴すると良い。 不妊の原因となる高プロラクチン血症は乳汁の分泌を促す催乳ホルモン・プロラクチンは授乳期でもないのに高くなってしまうことを指す。プロラクチンが高くなると、 卵子をつくるのに必要な卵胞ホルモンや卵胞促進ホルモンの分泌が低下し、卵がつくれなくなり、無排卵、さらに無月経になってしまう。人によっては乳汁が溢れることもある。
これは皮付きの麦を発芽させ弱火で軽く煎ったもので、大体一日30~50グラムを目安にそのまま煎じて、お茶代わりに飲むのが良いが、面倒な方は手軽に使える粉末状になっているエキスがある。
『晶三仙』(三仙茶)という名で日本にも輸入されいる。この晶三仙には麦芽以外に、サンザシ・シンギクといった消化を助ける生薬も配合されている。 月経不順や不妊のために受けた婦人科の検査の際、子宮が小さいと言われ、ショックを受けてしまう人をよく見かける。このような子宮発育不全は、西洋医学的には、性ホルモンに対する子宮の対応が鈍いか、 卵巣発育不全によるものと考えられる。
治療は早いほど良いが、気付かない人も多いし、月経の周期が長びいたり、経血量が少なくても、月経の煩わしさがなくて良かったと考えてしまったり、生理痛があっても、手軽に鎮痛剤で対処してしまって、
結果的に重症にしてしまう場合が多い。漢方では、子宮発育不全は、月経や生殖機能と深くかかわりを持つ肝腎(西洋医学の肝臓と腎臓とは違う)の働きの低下によると捉え、特に、「形を形成する」陰血を補うことに
重点を置く。方剤としては、杞菊地黄丸、または八仙長寿丸を婦宝当帰膠と一緒に飲用したり、冷え症の方や、冬の寒いときは、体を温める参茸補血丸を婦宝当帰膠または温経湯と共に飲用する。 生理がくればもう安心、と思っていませんか?実際には、生理がきても排卵しないケースがある。無排卵周期症または排卵障害といい、卵巣で卵子は発育できるが排卵まで至らない。 勿論妊娠もできない。不妊の女性の約一割弱を占めている。 原因は、精神的な緊張、ストレス、急激な環境や気候の変化、過労、栄養不良、病気など。西洋医学的には、まず排卵誘発剤のクロミットを使うが、2~3割が無効なので 、下垂体性腺刺激ホルモン(HMG)を使うしかない。HMGは注射剤なので、一週間前後毎日通院する必要があり、仕事を持つ方にはかなりの負担となる。 また、これらの注射剤で排卵が起こっても、多胎妊娠の可能性もあり、たとえ排卵をおこしても妊娠率が2割程度にとどまることがある。このような場合は漢方薬利用も考えるべきだ。 無排卵周期症最大の特徴は、月経量が極端に少なく、月経周期が長いこと。場合によっては、無月経や不正出血もある。漢方的に、これらの症状は『精血不足』と言って、当帰が血を補う主薬として
惜しみなく使わなければならない。そのため当帰の含有量が圧倒的に多い婦宝当帰膠が優れている。そのうえ腎精を補うのに杞菊地黄丸や参茸補血丸を加える。 不妊治療のために基礎体温を測ってみて、排卵してもすぐ体温が上昇せず、はっきりとした高温期になるまでは階段状に昇ったり、安定した高温期がなく体温がかなり上下したり、
高温期が短く十日前後しかなかったりする基礎体温パターンを持つ方は、黄体機能不全の可能性が大である。 中国漢方の立場からみると、黄体不全は『腎陽虚』として捉え、温腎助陽の作用を持つ海馬(タツノオトシゴ)や鹿角(鹿の角)や紫河車(人の胎盤)など動物性生薬を主に、淫羊角(イカリソウ)・
巴戟天(ハゲキテン)など植物性生薬補助的に使う。これらの腎陽虚を補う漢方薬によって、黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモンの働きをよくし、黄体から十分な黄体ホルモンや卵胞ホルモンを分泌で
きるように促します。即ち受精卵に暖かくふかふかしたベッドを用意できるようにします。よく使われるのは海馬補腎丸・双料参茸丸などである。更に高温期に不調の訴えの多い方や、血中プロラクチンの高い方は、
気血の停滞(肝気鬱結)もあると見て、疏肝理気作用のある逍遙丸を加えると、更に効果的である。
私はよく不妊の患者さんから不妊治療のついでにダイエットもしたいと懇願される。よく聞いてみると、元来豊満の方もおれば、不妊治療のためのホルモン療法で肥ったまま元に戻れない方もいる。
ダイエットは別として、肥っている方は痰湿(水分代謝や脂質代謝が乱れていることを指す)を持つ可能性が高い『痰湿肥満』 ! ! この痰湿は女性ホルモンに悪影響を与え、長引くと嚢胞やシコリ、
肥厚などの病変を引き起こすと考えられている。西洋医学でいう多嚢胞卵巣症候群(PCOS)は、中国漢方の痰飲による月経不順・不妊に相当する。BBT(基礎体温)も単層性で、多毛・ニキビもよく見かける。 中国漢方では痰湿を取り除くために、一般的には「蒼附導痰丸」が最もよく使われる(日本にはないため二陳湯と晶三仙で代用する)。もし舌苔が黄色でベトベトしていたり、赤いニキビが多い場合、
星火温胆湯や瀉火利湿顆粒を使う。
このような痰湿を取り除く漢方薬を服用すると同時に、必ず補腎薬も併用しなければならない。特に腎陽虚は最も多く見られるので、金匱腎気丸や牛車腎気丸がよく使われる。 異常がないのになかなか妊娠しない方、今まで人工授精や体外授精を受けていたが結果のなかった方、ホルモン療法やタイミング指導を受けながらそれで良いかと不安を抱えている方、 今まで自己流漢方を試していたがあきらめた方。不妊に悩むいろんな思いや考えを持つ方はいる。
例えば特に西洋医学的に検査で異常がないとされたカップルは性生活のタイミング指導ぐらいしかないが、中国漢方の場合は、女性に生殖機能を高める補血薬・補腎薬の婦宝当帰膠や参茸補血丸。
男性に性機能や生殖機能を促す補気薬・補腎薬の補中益気丸や海馬補腎丸を使って体調が整うと3~6ヶ月でめでたく妊娠する事は数えきれないほど例がある。
|